2011年07月03日

県民健康管理調査に対する緊急声明(7/3)

みなさま

福島大学教員有志により、県による放射線影響に関する健康権利調査に対して、緊急声明が発表されましたので、お知らせします。


★  ★  ★

全県民を対象とした放射線影響に関する健康管理調査についての緊急声明



はじめに

 東日本大震災にともなう福島第一原子力発電所の爆発事故を受けて、福島県は、震災から2ヶ月以上経った5月27日にようやく「健康管理調査検討委員会」を開き、6月の下旬から県民を対象とする健康管理調査を開始しています。また、6月23日には、政府が、福島県の健康管理調査に伴う費用を肩代わりすると発表しました。
 原発災害は、今なお進行中です。福島第一原子力発電所の事故は収束しておらず、仮に直ちに収束しても、約30年という長い半減期をもつセシウム137などによって汚染された地域においては、放射線レベルが急速に低下するわけではありません。私たちは今後も引き続き、余計な被ばくを避けるための手立てを講じていかなくてはなりません。
 行政が、ホールボディカウンター及び尿検査による内部被ばくの調査や、線量計の配布による外部被ばくチェックの支援に向けて動き出したことについては、それなりに評価できます。しかしながら、福島県のウェブサイトにおいて公表された県民健康管理調査の概要をみますと、一抹の不安を感じざるを得ません。
 放射線の健康影響を調査するためには、原発事故以降、県民がどれだけ被ばくしたのか、できるだけ正確に知る必要があります。しかし、県は、警戒区域及び避難区域の外に住む県民については一貫して安全論を唱えてきたため、これまで、県民の被ばく量の把握に関心を向けてきませんでした。県は、原発事故から3ヶ月ほど経過した今頃になって、県民に、3月11日以降の行動を思い出して記録するように呼びかけていますが、そのような対応のまずさについて、県からは一切の説明や謝罪がありません。つまり、県は今現在においても、低線量被ばくの健康影響はまったくないとの態度を改めていないものと思われます。そこで以下に、今回の健康管理調査における問題点を具体的に述べさせて頂きます。





健康管理調査における「放射線の影響による不安の解消」という目的の妥当性

 県は、健康管理調査の目的として、「放射線の影響による(県民の)不安の解消」を挙げています。確かに、調査の結果ほとんど被ばくしていないことがわかれば、不安の解消につながることもあるでしょう。一方で、低線量でも被ばくしていることが明らかになれば、必ずしも不安の解消とはなりません。被ばく量の把握が不安の解消をもたらすという考え方は、「福島県民の被ばく量など健康に影響を与えるほどのものではない」という結論が先にあるかのように読み取れてしまいます。低線量の被ばくと健康影響の因果関係については専門家のあいだでも意見が分かれており、今なお十分に解明されていない生物学的メカニズムを含む不確実な問題なのですから、はじめから被ばくの影響を軽んじて調査を行う姿勢は正当なものではありません。被ばく量を把握すること自体が県民の不安を解消するというのであれば、少なくとも、その根拠を示してください。





県民健康管理調査検討委員会の体制について

 健康管理検討委員会の座長には、県の健康リスク管理アドバイザーでもある山下俊一氏が起用されています。しかしながら、県の放射線対策を講じる立場にある者(リスク管理アドバイザー)が、いわば自身のリスク管理の結果としての「県民の健康状態」を評価するというのは、利益相反の観点から望ましいとはいえません。調査の中立性を保つためには、本来ならば、健康管理検討委員会にリスク管理アドバイザーを含めるべきではありません。もし、リスク管理アドバイザーを座長にしたままで調査を進めるのであれば、少なくとも、現リスク管理アドバイザーとは異なる立場の専門家(すなわち、低線量被ばくの健康影響について慎重な立場の専門家)を委員会に含めるべきであると考えます。加えて、健康管理検討委員会の人選のプロセス、委員会の審議内容、健康管理調査の透明性を確保するとともに、それらの正当性を評価するための第三者によるチェック体制が整うまでは、調査を進めるべきではありません。





「将来にわたる健康管理」が意味するもの

 県はさらに、健康管理調査のもうひとつの目的として、「将来にわたる県民の健康管理」を挙げています。5月23日付けの朝日新聞によりますと、「(調査により)癌の発生率の増加などの兆候がないかを早期につかみ、適切な治療につなげたい」というのがその内容のようです。しかしながら、仮に将来、ある県民において癌あるいは他の疾患の兆候が見つかったとしても、個々の患者レベルにおいては、それが被ばくの影響によるものか否かを証明することはほとんど不可能に近いと思われます。したがって、県民からすれば、被ばくによる健康影響はないものと簡単に片付けられるのではないか、との不安が付きまといます。県の健康管理調査が、被ばくと健康影響とは無関係であるとの「お墨付き」を積極的に与えるものにならないよう、私たちは強く希望します。
 そもそも健康とは、世界保健機関(WHO)によれば、身体的、精神的、社会的に良好である状態のことを指します。したがって、健康管理調査は、被ばくがもたらす身体的、精神的、社会的な影響を幅広く網羅するものでなくてはなりません。このような広い意味での健康に対する被ばくの影響が僅かでも疑われる場合には、患者が泣き寝入りしたり、無用な裁判に振りまわされたりしないよう、国や県は、被ばく者側に立った支援を行うべきであると考えます。





最優先されるべきは「余計な被ばくを少しでも減らす」こと

長期にわたる低線量の被ばくと健康影響に関する疫学的調査は、人類にとって有用な知見を与えるでしょうし、多くの研究者が関心を持つでしょう。しかしながら、被ばくしている当事者からすれば、病気にならずに済むのであれば、それが一番望ましいのは明らかです。低線量被ばくの健康影響についての見解は専門家のあいだでも一致をみていないという状況を踏まえますと、予防原則に基づいた現時点での合理的な方策は、余計な被ばくを少しでも減らす、ということに尽きるはずです。したがって、健康管理調査は、何よりもまず、県民の今後の被ばく量低減に少しでも役立つように行われるべきであると考えます。しかしながら、県の健康管理調査の趣旨からは、そのような目的意識が読み取れません。たとえば、ホールボディカウンターや排泄物検査による内部被ばくの検査は重要ですが、それ自体で、内部被ばくの低減をもたらすわけではありません。
 予防原則に則って県民の健康を管理するためには、すべての検査結果を個人に開示したうえで、平常レベルの被ばく量を超えた者については、体内の放射性物質を排出するための医療行為の妥当性についての判断、問診や生活記録に基づく被ばく経路の推定と生活習慣・環境の見直し、継続的な検診による被ばく量推移の把握、などを支援する必要があります。これらのことを、県は、健康管理調査の目的の重要な柱にすべきであると考えます。



以上



2011年7月3日



賛同者氏名(五十音順)



荒木田岳 (福島大学 行政政策学類 准教授)
石田葉月 (福島大学 共生システム理工学類 准教授)
井本亮  (福島大学 経済経営学類 准教授)
遠藤明子 (福島大学 経済経営学類 准教授)
小野原雅夫(福島大学 人間発達文化学類 教授)
金炳学  (福島大学 行政政策学類 准教授)
熊沢透  (福島大学 経済経営学類 准教授)
後藤忍  (福島大学 共生システム理工学類 准教授)
小山良太 (福島大学 経済経営学類 准教授)
坂本恵  (福島大学 行政政策学類 教授)
佐野孝治 (福島大学 経済経営学類 教授)
塩谷弘康 (福島大学 行政政策学類 教授)
澁澤尚  (福島大学 人間発達文化学類 准教授)
高橋準  (福島大学 行政政策学類 教授)
中里見博 (福島大学 行政政策学類 准教授)
永幡幸司 (福島大学 共生システム理工学類 准教授)
藤本典嗣 (福島大学 共生システム理工学類 准教授)
村上雄一 (福島大学 行政政策学類 准教授)
森良次  (福島大学 経済経営学類 准教授)



★  ★  ★


(by みかん)
posted by fukugenken at 13:16| 福島 ☁| Comment(13) | お知らせ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
福大生の保護者です。
先生たちの活動に敬意を表するとともに、今回の声明に賛同するものです。

本日の福大での広瀬隆さんの講演でもこの話題に触れられ、広島・長崎・水俣のように、対策もなしにモルモットにされ放置され、発症したとしても補償まで長時間を要するようになるのではないか、と懸念されていました。

今一番必要なのは、先生たちがおっしゃるように、発祥しないように対策することであります。

新たな先生方も賛同者として増えられ、益々心強く感じております。

広瀬さんは、30歳未満、特に若い女性は今すぐにでも福島を離れるべきともおっしゃっていました。安全安心な教育環境で学べるよう、福島大学の移転も含めて、ぜひご検討下さるようお願い申し上げます。

Posted by 高橋(山形県) at 2011年07月03日 20:09
1000人プロジェクト?

本記事とは直接関わりありませんが、一言。

大学ホームページに1000人プロジェクトなる提案が学長からあったようです。

福島大学1000人プロジェクト 7月13日㈬
12:00〜 S棟前広場
福島大学から世界へ
元気を伝える笑顔のメッセージ
福島大学の全学生、全教員、全職員へのお願い

1000年に1度の大震災からの復興を祈念して、目標1000人の集合写真を撮ります。クラスで、サークルで、友達同士で誘い合って、1000人の笑顔を結集しましょう。

福島大学長 入戸野修


ちょっと目を疑いました。大学のピーアール活動、営業活動を妨害するつもりはありませんが、いささか疑問を持ちました。

S棟前広場は、7月7日で1.36マイクロ、ピーク時には4.42マイクロ(3月24日、それ以前はもっと高いでしょうが記録なし)の放射線の数値が出ています。世界に発信するということですが、世界から見れば、そんな数値の高い場所でへらへら笑っているのは異状には見えないでしょうか。逆に世界の笑いものにならないでしょうか。

元気な姿を見せたいと言うのはわかりますが、放射線は目に見えない。大学をアピールするなら、こんな中でも十分に対策しながら、また放射線を取り除く活動を大学・地域で頑張っているところを見せてゆけばよいのではないのでしょうか。

Posted by 福大生の親 at 2011年07月08日 18:05
1000人プロジェクトについて。
私も「福大生の親」さんに、同意見です。
何故、今そんな発想が浮かぶのでしょう?驚きを通り越して、悲しみを感じます。やっぱり、学長さんは子ども達の事を真剣に考えていらっしゃらない?1.36μシーベルトは、本来なら、放射線管理区域の倍以上の数値。できれば、1分でもいて欲しくない。少しでも、数値の高いところは避けて欲しい。それが親の思いです。
将来の健康や様々なことを考えると、「福島大学へ通うこと」を選択したことが本当に正しかったのか、不安が消えることはありません。

そんな中、放射線量の高い場所で千人の笑顔?

今、目を向けて欲しいのは世界ではなく、この場で学ぶ学生たちです。今、大事なのは世界へのアピールではなく、若い彼らの健康を、形式だけではなく本気で守ることではないでしょうか・・。
 
FGFの活動とは関係ない書き込みで、大変 申し訳ありません。

福島大学に、FGFの皆さんのような先生がいて下さる事に、あらためて感謝しています。

Posted by 保護者 at 2011年07月11日 00:20
先生方の声明に賛同します。
被曝を少しでも少なくするための取り組みが緊急に必要です。食事、服装、掃除、洗濯などなど日常生活でどう気をつければ被曝を減らすことができるのか、広く知らせるべきです。安全、安心を繰り返すばかりでは被曝は減りません。
Posted by uriwari at 2011年07月13日 00:15
先生方の声明に賛同します。
被曝を少しでも少なくするための取り組みが緊急に必要です。食事、服装、掃除、洗濯などなど日常生活でどう気をつければ被曝を減らすことができるのか、広く知らせるべきです。安全、安心を繰り返すばかりのアドバイザーはいりません。
Posted by uriwari at 2011年07月13日 00:15
先生方の様々な支援活動、本当にありがとうございます。
さて、本文とは関わりありませんが、先に1000人プロジェクトについての疑義を大学に照会したところですが、回答が来ましたのでお知らせします。内容は、下記ブログをご参照ください。
http://ginga123.blog.ocn.ne.jp/blog/
保護者の皆さんのコメントも併せてご参照いただければ幸いです。


Posted by 福大生の親 at 2011年07月13日 05:50
福島大学教員有志の皆さんの活動に賛同致しております。

県は、県民の健康を第一に考えるべきです。
被ばくの詳細調査(少なくとも尿検査)は基本調査の結果必要と認められる者に限らず、全県民、あるいは希望する県民全てに対して行うべきです。
そして低線量地域においても、将来的に何らかの健康被害が出た場合は、すみやかに、その因果関係を認め補償することを約束してほしいです。

さらに、
@長期にわたる低線量被ばくの影響については、専門家の間でも意見がわれる問題で、現在のところ、必ずしも安全とは言い切れないこと。
A余計な被ばくは避けるのが望ましいこと。
これらのことは、しっかりと、福島県民に伝えるべきです。

原発事故当初より、安全性ばかりが強調され続けてきた結果、余計な被ばくを回避するどころか、なにも気にせず、事故前と同じ行動をしている人も少なくありません。そのような人々と健康被害を心配する人々の間に、この問題に関する温度差も目立ちます。そのため、不安を抱えていても、なかなか口に出して言えない現状もあります。
放射能に関する心配ごとすらも、おおっぴら語り合えない福島県の現状はどこかおかしいと思いませんか?

今、福島県民は地域によって線量に差はありますが、放射能に曝されているのは事実です。この現実に県民自身も目をそむけるべきではありません。
政府が安全だと言うから、あるいは、心配しすぎるのは風評につながるからなどと、被ばくを容認するのではなく、県民一人一人が「余計な被ばくはしたくない」とはっきりと主張すべきだと思います。

県民の健康が守られてこそ、風評被害も払拭できると私は思います。
Posted by 県南在住 at 2011年07月13日 15:31
遅くなりましたが、この緊急声明を葵寮ブログで紹介させていただきました。

今後ともよろしくお願いします。

先生方のような志のある方に、学長や副学長になっていただき、福島大学の体制を変えて頂きたいです。

もう、いまの福島大学を変えることは…できないと思います。
Posted by 葵寮ブログ管理人 at 2011年07月14日 21:41
本日、日本原子力研究開発機構と福島大学が協定を締結したとのこと。

福島大学や某県医大(かの100ミリまで大丈夫氏が副学長に?)も「原子力村」の片隅に配置されて、研究予算をいただく代わりに、誰も物も言えぬ状態になってしまうのでしょうか。

学長や当局はいったいどこを向いているのでしょうか。真っ先に考えるべきは学生や地域住民のことではないのでしょうか。大学が「学問の府」「科学の砦」ならば、それは誰のために行使するためにあるものでしょうか。

1000人プロジェクトといい、今回の件といい、まったく残念です。お前に関係ないと言われればそれまでですが、自分の子供を学ばせる場としてふさわしいのか、疑問は膨らんでおります。

下記をご参照ください。
http://ginga123.blog.ocn.ne.jp/blog/


Posted by 福大生の親 at 2011年07月20日 20:07
なんと驚いたことに、本日、福島大学と日本原子力研究開発機構が協定を締結したとのこと。

福島大学や某県医大(かの100ミリまで大丈夫氏が副学長に?)も「原子力村」の片隅に配置されて、研究予算をいただく代わりに、誰も物も言えぬ状態になってしまうのでしょうか。

学長や当局はいったいどこを向いているのでしょうか。真っ先に考えるべきは学生や地域住民のことではないのでしょうか。大学が「学問の府」「科学の砦」ならば、それは誰のために行使するためにあるものでしょうか。

1000人プロジェクトといい、今回の件といい、まったく残念です。お前に関係ないと言われればそれまでですが、自分の子供を学ばせる場としてふさわしいのか、疑問は膨らんでおります。

関連 下記ブログにて
http://ginga123.blog.ocn.ne.jp/blog/

Posted by 福大生の親 at 2011年07月20日 20:16
大学では8月7日(日)オープンキャンパスの際に「保護者の方と学長との懇談会」の時間を設けました。また、この懇談会終了後には「放射能相談コーナー」を設け、副学長が直接保護者の方のご質問にお答えする時間も設けました。

在学生の保護者も参加可能ですので、ぜひ直接学長と懇談してみましょう。



【保護者の方と学長との懇談会】
午前の部:11時00分〜12時15分、M22教室(M棟2階)
午後の部:13時40分〜14時55分、M22教室(M棟2階)

【放射能相談コーナー】
12時15分〜13時15分、M22教室(M棟2階)
14時55分〜15時55分、M22教室(M棟2階)
Posted by 福島大学安全安心な教育環境をめざす保護者の会(仮称) at 2011年07月30日 11:11
8月7日の学長と保護者の懇談会結果については下記をご参照ください。ご覧の上、ご意見をいただければ幸いです。
http://ginga123.blog.ocn.ne.jp/blog/

Posted by 福島大学安全安心な教育環境をめざす保護者の会(仮称) at 2011年08月11日 23:39
ご存知かも知れませんが、食品による内部被曝に対して具体的な対策が講じられています。ご参考ください。

http://www.youtube.com/watch?v=d0u_rQzWdL8
全部で7話です。

ビデオで述べられているように、東電に断固として即急の賠償請求をすべきと思います。風評被害だけでも相当なものですし、福島の再興のために是非とも、農作物の放射線検知器を一刻も早く導入すべきと思います。

福島出身ではありませんが、福島を愛する者としてできる限りのことをしたいと思っています。
Posted by 福島を愛する日本人 at 2012年01月13日 08:17
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